取材日:2026年7月20日
大学在学中に物販ビジネスで起業し、7年かけて育てたスクール事業を、2026年2月に東証グロース上場のエフ・コードへ譲渡(グループ全体の想定企業価値は約30億円)。その直後から、株でも債券でも不動産でもなく「ポケカ」に毎日投資を続けている29歳がいます。株式会社AI ONE代表・森谷和正さんです。なぜイグジット起業家は、大手証券の営業をすべて断り、ポケモンカードのBOXを積み上げ続けることを選んだのか。買い付けの実務から、想定リターン、出口戦略、そして「買い占めでは」という批判への考え方まで、本音で聞きました。
森谷さんが代表を務めていた事業グループの株式譲渡については、エフ・コード社の適時開示(2026年2月10日)をご参照ください。
「投資のお誘いが、自宅までおしかけてきた」|半年かけて、全部の金融商品を触ってみた

会社を売却すると、何が起きるのか。森谷さんの場合、まず大手証券会社の営業が殺到しました。
めちゃくちゃ来ました。DM、手紙、メール、電話。家まで来られたこともあります(笑)。野村さん、大和さん、みずほさん、UBSさん、大手はほぼ何らかの手段で全部来ましたね。
熱心に勧められたのは債券でした。しかし森谷さんの結論は「なし」だったといいます。
債券はインカムは取れるけど、キャピタルゲインを大きく狙えるものではない。僕はいま29歳で、売却したのが28歳のとき。この若い年齢でインカム狙いの債券に寄せるのは、賢い選択ではないなと。
そこから約半年、株・不動産・その他の資産クラスを実際に自分の資金で触って検証しました。Google株に約1億円、S&P500に約5,000万円。不動産は融資(レバレッジ)も活用しながら、複数の物件を取得したといいます。
不動産はどの物件も融資を活用しています。株も不動産も、もちろんいい。でも、いろいろ触ってみた結果、「いま、このタイミングで資産を突っ込むのに一番いい」と思ったのはポケカだったんです。
現在は不動産を軸に据えつつ、株はいったんノーポジション。その余力をポケカに集中させています。
情報源はリアルな現場。7年運営したスクールから

なぜポケカだったのか。その根拠は「界隈の噂」ではなく、自身が7年運営してきた物販スクールの現場データでした。
うちのスクールの講師や生徒たちが、みんなポケカをやってるんですよ。報告が上がってくるなかで、ポケカが一番稼げていた。長い人だと6〜7年前に始めて、融資も引きながら直近5年で資産を5倍以上にしていた。なぜ上がったのかも全部聞いて理解した上で、「ここが一番堅い」と思ったんです。
ポケカ・BOXの選定も、同じ構造です。
正直、僕自身は個別の銘柄が「良いか悪いか」を一から目利きしているわけじゃないんですよ。講師の子たちが、融資を引いて自分の資金でめちゃくちゃ仕入れている。つまり僕より先にリスクを取っている。その子たちが「いま仕込んでいるもの」「これがいい」というものを買っているだけなんです。
SNSでは「何を根拠に買っているのか」という質問が多く寄せられますが、答えはシンプルでした。現場で実際に勝っているプレイヤーたちの、実弾の情報。それが森谷さんの銘柄リサーチのすべてです。
なぜBOXなのか?なぜスニダンから仕入れるのか?「偽物リスク」と「量を買う」問題

購入の主軸は、新品・シュリンク付きのBOX。仕入れはスニーカーダンク(スニダン)の一択だといいます。
シングルカードは1品1品の目利きが必要で、何千万円分も買えない。BOXの最終ロット詐欺やシングルの偽物も怖い。スニダンは鑑定が付いているので、量を買うならここが一番なんです。
買取店やフリマ経由の大口取引には、「入金して飛ばれた」という話を周囲で聞いており、信用リスクを重く見ています。
周りで実際に、入金したのに飛ばれたケースがあるんですよ。それをやられたらトータルリターンは一発でマイナス。そのリスクを考えると、プラットフォームが信用を担保してくれるスニダン一択でした。
ポケカ投資には多様な手法がありますが、森谷さんの場合は「まとまったロットを、偽物リスクなく、継続的に買う」という条件から逆算した選択だといえます。
毎日、コツコツ買う。まるでポケコスト平均法|一気に買うと、割高になる

購入は毎日、少額ずつ。秘書を通じて、市場の様子を見ながら買い付けています。総額では相当な金額の投資を計画しており、すでにまとまった金額を投じているといいます。
一気にバコンとは買えないんです。供給がないので。いきなり在庫を抱えようとすると割高で買ってしまう。だから、ちょっとずつちょっとずつ、市場の様子を伺いながら毎日買っています。
いわば、ポケカ現物版のドルコスト平均法です。届いたBOXは自宅(約80〜90㎡・3LDK)に専用ラックを組んで保管。除湿剤を入れ、セキュリティの高いタワーマンションで管理しているといいます。
毎日すごい量の段ボールが届きます(笑)。今日もラックを組んでいました。面倒くさいですよ。でも、面倒くさいけど儲かる、が一番いい条件だと思っているので。
3〜5年ホールドで3倍を狙う|出口と、税務の考え方

想定リターンは約3倍。保有期間は3〜5年の中長期です。
ざっくり3倍を狙いたい。いま仕入れているものが、3年、5年と寝かせて数倍になればいい。基本は持ち続けるつもりです。
売却は一気にではなく、市場の節目で少しずつ。背景には資産管理会社の税務設計があります。
僕は資産管理会社を持っていて、そちらは経費で赤字が出る。それをちょうど埋めるくらいの利益を、含み益が出たぶんから少しずつ確定していくイメージです。だから「3年後に全部を1年で売る」みたいなことは、まずないです。
そもそも「売りたくない」が本音だといいます。
株でも不動産でも、売り買いを繰り返す人が手数料で損をして、長期で持ち続けられる人が一番得をする。基本は持ち続けます。10年持ってもいいくらいの捉え方です。
「買い占めでは!?」への答え|未開封BOXは、未来へのタイムカプセル

大量購入には「買い占めで値段を吊り上げているのでは」という批判もつきまといます。森谷さんはどう考えているのか。
価格は結局、需給バランスで決まっています。それだけIPの価値が強いということ。そして僕は、買ったBOXを絶対に開けません。世の中のシュリンクは開封されて絶対数が減っていく。僕が未開封のまま保管し続けることで、将来「本当に欲しい」という人に、そのまま届けられる。未来へのタイムカプセルみたいなものだと思っています。
短期転売で回転させるのではなく、長期保有で市場から一時的に退蔵し、数年後に少しずつ市場へ戻す。この時間軸の長さが、いわゆる「転売」との最大の違いです。
成功の原体験は、受験の失敗|「東大落ちから、人生をまくりたかった」

なぜここまでお金と勝負に執着できるのか。原点を聞くと、意外な答えが返ってきました。
僕、大学受験で第一志望に落ちているんですよ。一緒に勉強していたメンバーは、みんな上の大学に行った。中学受験も第一志望、第二志望と落ちています。負けず嫌いなのに、学生時代に成功体験がなかった。だから大学に入ったとき、「ここから人生をまくりたい」と思ったんです。そのとき勝てると思えたのが、お金を稼ぐという土俵でした。
起業のきっかけも、華やかなものではありませんでした。大学の三田祭休みに行ったグアム旅行。その旅費すら、当時の恋人に出してもらったといいます。
大学生で貯金はほぼゼロ、FXで負けて、投資詐欺にも遭って、借金もありました。グアムのアウトレットで服が安く売られているのを見て、「日本で売ったら利益が出るんじゃないか」と。そこが物販の原体験です。
7年間、PCを開かなかった日はない|「たまたま運よく当たってポケカを大量に買っている人」ではない

SNSの断片だけを見ると「たまたま儲かってポケカを買いまくっている人」に見えるかもしれません。だが実態は違う、と森谷さんは言います。
創業からの7年間、1日も休んでいないんですよ。パソコンを開かなかった日は、たぶん1日もない。イグジットした今も、死ぬほど働いています。
ポケカ投資は「あがり」の道楽ではなく、7年の事業経験と、現場の情報網の上に成立している資産運用だといえます。大量のポケカを個人で買うにしても、日々の買い付けの作業時間や、自宅にBOXを置く場所の確保など、その手間は相当なものです。
ポケカは「怪しい資産」なのか|コレクター実需と、海外需要

これから始める層にとって、ポケカ投資には「怪しい」というイメージも残ります。森谷さんの見方はこうです。
ポケカにはコレクターの実需があります。仮想通貨には「そのコイン自体が欲しい」という実需はないですよね。少なくともビットコインと比較すれば、カードそのものへの需要がある分、堅いと思っています。
需要は国内にとどまりません。
うちのスクールではeBay輸出も教えているんですが、トレカを海外に売って月100万円稼ぐ子が結構いる。特にアメリカで、PSA鑑定済みのシングルカードやヴィンテージの需要が大きい。グローバルな市場になっています。
むしろ「怪しいと思われているうち」が仕込みどきだ、とも語ります。
合理的に「ここは勝てそうだ」という論理さえあれば突っ込めます。怪しくて近寄らない人が多いほうがいい。みんなが分かってから来る相場は、もう妙味がないので。
これから始める人へ|「まず、シングルを1枚買ってみる」

既存の株・不動産投資家や、ポケカ未経験の読者へのアドバイスを聞きました。
とりあえず、良いシングルカードを1枚買ってみるのがいいと思います。いきなり大量に買うんじゃなくて、たとえば30万円くらいのものを1枚。カードが届くと、シンプルに嬉しいんですよ。アートみたいで可愛いし、価格も動く。その小さな成功体験から始めるのがちょうどいい。
下がっても上がっても「アートとして楽しめる」1枚から。数百万円のBOX買いは、その先の話だといいます。
市場全体へ|「僕の発信関係無しに市場は動くものだから、みんなやってみてほしい」

最後に、市場全体との向き合い方を聞きました。
みんなにやってほしいんですよね。もちろん参入者が増えれば価格が上がるという面はありますけど、それ以前に、僕の発信がなくても上がるものだと思っているので。面倒くさいけど儲かる、が好きな人には特に向いていると思います。
現金のまま寝かせず、市場に資金を投じ続ける。批判も含めて注目が集まること自体を、森谷さんは歓迎しています。
どんなコメントでも、見てもらえるだけでありがたいです。一番つらいのは、忘れられることなので。ポケカ市場を盛り上げていきたいですし、議論も全然ウェルカムです。
会社を売った29歳は、いま毎日、未来のタイムカプセルを積み上げている。
その一つひとつのポケカBOXには、起業から7年間1日も休まなかった男の執着がつまっているように見えた。






取材日:2026年7月20日
編集・取材:トレカプロ

