月商7億円。ウォースの23歳・中野泰輔社長がトレカ業界に挑む3つの理由

月商7億円。ウォースの23歳・中野泰輔社長がトレカ業界に挑む3つの理由

中学時代の物販で月商600万円。暗号資産(仮想通貨)にいち早く触れ、N高時代の同級生とWeb3企業「株式会社woorth」を創業した中野泰輔さん。2025年に秋葉原でオープンしたトレカ実店舗「ローリエ本舗」は、初日から整理券入場の行列ができ、わずか3日間で総売上1,000万円を達成しました。Web3とトレカ、二つの世界を同時に走る23歳の起業家。トレカ業界に挑む“3つの理由”を軸に、その原点から事業哲学までをじっくり聞きました。

数字が増えるのが、たまらなく好きだった|10歳の関数電卓と中学時代の物販

中野さんの「好奇心」を象徴するエピソードがあります。10歳の誕生日に欲しがったのは、おもちゃではなく関数電卓だったといいます。その理由を本人に尋ねると、意外な答えが返ってきました。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

正直、10歳のときになぜ関数電卓を欲しがったのかは、覚えていないんです(笑)。ただ、昔から数字が好きなのは間違いなくて。数字に追われて、数字を追いかけて生きている感覚があります。桁が増えていくのが、とにかく好きなんですよね。

数字への偏愛は、そのまま「結果を増やす」ことへの執着につながっていきます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

勉強した度合いを測れるのは、勉強した時間じゃなくてテストの点数ですよね。結局、あらゆる結果は最後は数字に行き着く。その数字を増やしていくのが、仕事でも好きなんだと思います。山登りで上のほうまで来て、見渡せるようになったときの感覚に近いのかもしれません。

本格的にビジネスが動き出したのは中学生の頃。中国輸入の物販でした。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

たまたま調べていて、これは稼げそうだなと思ったんです。100円で仕入れたものが800円で売れる、みたいな商品が当時はいくらでもあった。まだ越境ECが弱くて、中国から個人で買うこと自体、みんなができなかった時代でしたから。

物販は高校に入ってからさらに伸び、月商は600万円規模に達したといいます。それでも、稼いだお金の使い道は意外なものでした。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

高いものを買うとかは、一切なかったんです。ただ数字が増えるのがうれしかった。当時から好きだったK-POPの紹介動画をつくって発信したりもしていて、「発信する」こと自体は早くからやっていましたね。

派手な浪費には向かわず、ひたすら「数字が増えていく」こと自体に喜びを見いだす。稼ぐだけでなく、自ら情報を発信する。のちに事業を次々と立ち上げ、SNSから出会いやチャンスを引き寄せていく中野さんの“原型”は、すでに10代のうちに出来上がっていたのかもしれません。

「ニュースを見ろ」から始まった|暗号資産との出会いと“情報感度”

中野さんが暗号資産に触れ始めたのは2015年ごろ。ビットコインもイーサリアムも、まだ知る人ぞ知る存在だった時代です。その「きっかけ」を聞くと、答えは家庭環境にさかのぼりました。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

きっかけと言われると難しいんですが、強いて言えば「ニュースを見ろ」と親にずっと言われて育ったから、としか言えなくて。家に帰ると親が夕方のニュースを流していて、深夜に降りてきてもニュースがついている家だったんです。だから自然と見るようになった。もしアニメやドラマが流れていたら、たぶん僕はそっちになっていたと思います(笑)。

新しいものをいち早く見つける「情報感度の高さ」は、まわりからもよく指摘されるそうです。ただ、本人の自己分析はあくまでフラットでした。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

よく感度が高いと言われるんですけど、たぶん見ている量が人より多いだけなんです。面の大きいラケットで振っていれば、たまに当たる。その振る回数も多い、というだけだと思っています。気になったことは、とにかくすぐ調べにいく。それが無意識のクセになっているんですよね。

中野さんが暗号資産に触れたのは、いまからは考えられないほど価格が低く、本人確認すら必要なく買えた時期でした。中学生のうちから新しいテクノロジーに手を伸ばしてきた経験は、のちのWeb3起業の確かな土台になっていきます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

情報を取りにいくのは、もはや趣味みたいなものなんです。日経新聞でも、移動中にスマホで流れてくるニュースでも、とにかく浴びていないと落ち着かない。面白いものは、だいたい偶然の積み重ねから見つかる。その偶然に出会う回数を、自分なりに増やしてきた感覚ですね。

N高の同級生と「woorth」を創業|Web3で「社会に新しい選択肢を」

2021年、中野さんはN高時代の同級生とともに株式会社woorthを創業します。掲げるのは「社会に新しい選択肢を」「無限の価値を見つけて伸ばす」というビジョン。事業の軸はブロックチェーン・システム開発で、NFTの真贋鑑定ツール「eagis」や、法人向けWeb3リサーチサービス「Ozon Labs」などを展開してきました。

創業翌年にはMicrosoftのスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」に採択。暗号資産取引所コインチェックの「業界リーダー18名」にも選出され、ビットコインの半減期についてコメントを寄稿するなど、Web3領域での発信を続けています。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

ブロックチェーンとシステム開発の事業は、いまも会社の主軸です。トレカはあくまで新規事業のひとつ。どちらかに寄せるというより、面白いと思える領域に素直に張っていくという感じですね。

なぜWeb3起業家がトレカ事業に?|秋葉原「ローリエ本舗」誕生の経緯

秋葉原「ローリエ本舗」の店内。買取カウンターと販売スペースが一体になった店舗レイアウト

Web3企業として走り続けるなかで立ち上げたのが、トレカ事業部でした。もともとカードゲームには馴染みが深く、プレイヤーとしてもコレクターとしても親しんでいたといいます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

もともとデュエル・マスターズやポケカで遊んでいて、コレクションも持っていました。そんなときにご縁があって、SNSで絡みのあった方から「一緒に店をやろう」と。電話で話した次の日には、契約しに行っていました(笑)。だから、発信は本当に大事だなと思います。普段から情報を出していたことが、こういう出会いにつながったので。

Web3とは一見遠いトレカ事業ですが、中野さんにとっては地続きでした。プレイヤーとして、コレクターとして、そして「市場」としてのトレカを、早くから肌で感じていたからです。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

カードゲームは昔から遊んでいたので、相場が動く感覚や、何に価値がつくのかは、なんとなく分かっていました。しかもお金がしっかり動く市場でもある。自分の「好き」と「数字が動く面白さ」が、ちょうど重なる領域だったんです。

こうして生まれたのが、秋葉原のトレカ専門店「ローリエ本舗」です。意思決定の速さは、後ほど語られる中野さんの行動哲学そのものでした。

オープン3日間で総売上1,000万円|整理券入場の行列

ローリエ本舗オープン時の行列。上空から撮影した整理券入場の様子

2025年2月にオープンしたローリエ本舗は、立ち上げから大きな反響を呼びました。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

オープン初日から整理券での入場になるほどの行列で、閉店時間ギリギリまで途切れませんでした。プレオープンとグランドオープンの3日間で、総売上1,000万円。目標にしていた数字を達成できて、本当にありがたかったです。

オープン後しばらくは、中野さん自身もほぼ毎日店頭に立ち、来店客と顔を合わせていたといいます。そして、その勢いは一過性のものではありませんでした。オープンから1年あまりで、トレカ事業は月商7億円規模にまで成長しています。

中野泰輔がトレカ業界に挑む3つの理由

Web3起業家である中野さんが、なぜトレカ事業に乗り出したのか。話を整理すると、大きく3つの理由が見えてきます。

理由①:「好き」と「数字が動く市場」が重なっていた

ひとつは、自分の「好き」と、数字が動く面白さが重なる場所だったこと。中野さんはもともとデュエル・マスターズやポケカで遊ぶプレイヤーであり、コレクターでもありました。同時に、トレカは相場が日々動き、お金も大きく動く市場です。「好き」と「数字を追う面白さ」が一致する、数少ない領域だったといいます。

理由②:業界の「信頼」を、まだ変えられると感じた

ふたつめは、業界に残る「信頼の課題」に、変えられる余地を感じたこと。入金までの遅さ、査定をめぐるトラブル。大手の看板に隠れて見過ごされてきた不便を、買取で信頼される店をつくることで変えられる。そう考えたことが、参入の大きな動機になりました。

理由③:本業とインフルエンサーで「勝てる座組み」があった

みっつめは、勝てる「座組み」が最初からあったこと。本業であるWeb3・システム開発事業の安定収益が、店舗の初期費用や固定費を支える。さらに、ローリエさんをはじめとするインフルエンサーの協力で、普通なら1〜2年かかるネームバリューを最初から得られる。「好き」だけで突っ込むのではなく、勝てる条件をそろえてから動く。これも中野さんらしい一手でした。

ここからは、この3つの理由を軸に、中野さんの事業づくりを掘り下げていきます。

トレカ業界の「信頼」を取り戻したい|中野が見ている“3層の信頼”

ローリエ本舗は、買取に強みを持つ店舗です。その背景には、トレカ業界そのものへの問題意識があります。中野さんは「信頼」を3つの層に分けて捉えていました。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

ひとくちに「信頼」と言っても、種類があると思っていて。ひとつは、ちゃんとお金が入金されるか、というお客さま目線の信頼。もうひとつは、査定がきちんと行われるか、預けたカードに無い傷をつけられたり、それを理由に減額されたりしないかという信頼。最後が、ネームバリュー的な、包括的な信頼です。

中野さんが課題に感じているのは、3つ目の「ネームバリュー」だけが肥大化し、本来もっとも大切な1つ目・2つ目が薄れている現状だといいます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

これまでの業界は、大きいところがさらに大きくなる構造でした。その分、入金まで何営業日もかかったり、トラブルが大手の看板に隠れてしまったり、ということが起きる。いわゆる「殿様商売」的になってしまっている部分がある。そこを少しずつ変えていきたいんです。

たとえば、大切に保管してきたカードを買取に出したのに、入金は1週間以上先。査定で「これは傷がある」と言われ、納得のいかないまま減額される。利用者にとっては不安の大きい体験です。中野さんは、こうした「当たり前になってしまった不便」こそ、ていねいに潰していくべきだと考えています。

信頼を“仕組み”にする|早い入金・現金対応・プロを育てる買取

問題意識を、中野さんは具体的なオペレーションに落とし込んでいます。まずは「入金の速さ」と「現金対応」。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

うちは、数百万円の買取でも現金でお渡しできるよう案内しています。これが意外と大変で、マネーロンダリング対策などもあって、銀行からまとまった現金を用意するのも簡単じゃないんです。それでも、入金を待たせないことが信頼につながると思っているので。

次に、買取に関わる人をあえて絞り、専門性を育てる方針です。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

買取に関わる人は、あえて増やしすぎないようにしています。広げればトラブルも起きやすくなるので。だからプロフェッショナルを一人ずつ育てていく。在庫を抱えるビジネスなので、最初に支払う額が大きいほど資金繰りは大変ですが、信頼を得るために必要なコストだと考えています。

こうした「先に支払う」「現金で渡す」スタイルを支えているのが、本業であるWeb3・システム開発事業の安定収益でした。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

店舗の初期費用や固定費は、本業の事業でしっかり賄えていました。だから極端な話、最初の数店舗まではトレカで1円も売れなくても、会社全体ではプラスになるように設計していたんです。いまはトレカのほうが出費は大きいですが、土台があったからこそ思い切れた部分はあります。

集客面で大きかったのが、インフルエンサーとの協業です。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

ローリエさんをはじめ、インフルエンサーの方々の協力が大きいです。普通の店舗なら1〜2年かけて積み上げるネームバリューを、最初から持って始められた。しかも出た利益からお支払いする形なので、こちらが払いすぎることもなく、結果的にお客さまへの還元にもつながっています。

5店舗を率いる組織づくり|採用は100%X、社長が全員と会う

woorthのチームメンバーがソファに並んでPCで作業する様子

ローリエ本舗は、2026年5月時点で秋葉原に4店舗、名古屋に1店舗の計5店舗を展開。大阪への出店も近いといいます。地方への展開は、人のつながりから生まれました。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

名古屋は、一緒に買取をやっているメンバーの知り合いがきっかけで立ち上げました。毎日動く金額が大きい商売なので、信頼できる人とでないと、なかなか難しい。1店舗で1日に1,000万円以上の買取が動く日もありますから、そこは慎重にやっています。

中野さんが描く成長のイメージは、シンプルな「掛け算」です。信頼できる事業責任者が一人増えれば、任せられる店舗が一つ増える。それが大阪、横浜と広がっていけば、売上はそのまま店舗数のかけ算で伸びていく。だからこそ、店舗運営そのものより「任せられる人をどう増やすか」に、いちばん神経を使っているといいます。

採用は、ほぼすべてX(旧Twitter)経由。母集団の大きさと、社長自らが会うスタイルが特徴です。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

採用は、ほぼ100%Xです。DMだけで月に40件ほど来て、面接も月15件くらい。販売スタッフ以外は、基本的に僕が全員と会っています。温度感や熱量の共有は、自分が出ないとダメだなと思っていて。話せば、20〜30分くらいでだいたい分かるんです。

ミスマッチを防ぐため、面接では「しんどい部分」こそ先に伝えるといいます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

いいところだけでなく、棚卸しで徹夜になる日があることまで、しんどい部分を最初に全部伝えます。社員以上には、売上目標に対して「どうやって達成するか」の仮説を必ず持ってもらう。そうやって、働く前から実際の数字や中身を見せておくと、入ってからのミスマッチが起きにくいんです。

面接は、一度では終わりません。最初に中野さんと話し、二度目は実際に店舗へ。働く様子を見てもらい、楽に進められる部分も、大変な部分も包み隠さず伝える。「いま、これくらいの売上を、こうやってみんなで作ろうとしている」という“現在地”まで共有するのだといいます。

評価のスピードも、この組織の大きな特徴です。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

うちは決済権を渡すのも、役職をつけるのも早いんです。大学4年生でアルバイトをしていた子を新卒で採用して、入社1日目から店長にしたこともあります。やる気がある人には、年齢に関係なくどんどんポジションを渡したい。

一方で、業界全体の給与水準には強い問題意識を持っています。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

トレカ業界の良くないところのひとつが、給与水準が低いことなんです。店長クラスでも、コンビニのアルバイトより安い、みたいなことが普通に残っている。好きなことだから、というだけで成り立たせるのは違うなと。やりがいだけに頼らない形に変えていきたいです。

求める人物像は、明快でした。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

一緒に経営に関わってほしい人で言うと、一度起業した経験がある人をすごく採用しています。事業責任者が増えるほど、店舗は掛け算で増やせるので。あとはトレードが好きな人。うちの上層部は全員、株やカードのトレードをやっていて、毎日変わる相場の需給を理解できる人は、この仕事にとても向いていると思います。

長く活躍してくれるのは、どんな人なのか。中野さんは「入り口」を大切にしているといいます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

長く続いてくれるのは、やっぱり誰かの紹介で来てくれた人が多いんです。紹介してくれた人の顔を潰すわけにはいかないので、お互いに信頼が働く。逆に、他店の経験者はうちはむしろ少ないくらいなんですよ。

ハードな現場も、チームで乗り越える文化があります。棚卸しの日は、営業に影響が出ないよう、夜通しで数人がかりで取り組む。それを「意外と楽しいんですよ」と笑う中野さんの表情に、組織の空気感がにじみました。

ちなみに、本体・トレカ事業ともに平均年齢は25〜26歳。スタートアップ界隈での発信を通じて集まった、経営経験のあるメンバーが多いといいます。

共同創業者を置かない理由|“揉めごと”を避ける組織論

woorthには、いわゆる共同創業者の取締役がいません。立ち上げ時は3人だったといいますが、中野さんはあえて「一人」の体制を選んできました。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

立ち上げのときは、アフィリエイトをやっていた頃にシステム開発を手伝ってくれたエンジニア2人と、僕の3人で始めました。ただ、周りから「共同創業はしないほうがいい」という話をよく聞いていて。実際、それで揉めている人をたくさん見てきたので、結果的にしなくてよかったなと思っています。会社の規模がもっとスケールしたら考えるかもしれませんが、いまは特に。

その代わり中野さんが重視するのが、「経営の解像度が高い人」を事業責任者として迎えることです。トレカ事業を統括する責任者も、そんな一人でした。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

いまトレカ事業全体を見ている責任者は、もともと大手フリマアプリでUX改善を手がけていた人なんです。トレカを立ち上げる1年ほど前に、デザイナー募集に応募してくれて。本人も10代から受託や事業をやっていて、別の会社でバイアウトまで経験している。事業の解像度が一人で高いので、すごく頼りにしています。

中野さんは、肩書よりも「フラットさ」を大事にしているといいます。責任者クラスのメンバーにも、自分の会社を持っていたり、別の会社でCFOを務めていたりと、経営を経験した人が少なくない。だからこそ、役職にこだわらず動ける組織になっているのだと話します。

中野流・事業のつくり方|「失敗しない力」と「1秒後に動く」

複数事業を同時に動かす中野さんに、事業づくりの根っこにある考え方を聞きました。よく口にする「再現性」は、実は2番目だといいます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

「再現性」はよく使うんですが、一番好きな言葉ではなくて。一番大事だと思っているのは、失敗をどれだけ回避できるかという考え方なんです。成功する方法を見つけるのは難しいけれど、失敗しない方法なら、日々見つけられる。だから僕は、人の成功談より失敗談を聞くほうが好きなんです。

人の話を聞くときも、中野さんの関心は「成功」より「失敗」に向きます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

成功談って、結局その人のタイミングや運が良かっただけ、ということも多いと思っていて。それより、どこでつまずいたのかという失敗談のほうが、自分にとっては役に立つんです。同じ失敗を避けられるので。だから「失敗ばかりを語るチャンネル」みたいなものがあったら、ずっと見ていられます(笑)。

「失敗を避ける」という発想の原点には、親の言葉と、自分自身の歩みへの内省がありました。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

20歳をすぎたころ、親が言っていたことは結局あっていたなと気づいたんです。「これはやめておけ」と言われたことは、だいたい当たっていた。学歴の話もそうで、行かなかったからいま自由に事業ができている面もあるし、何が正解かは分からない。ただ、親が「やっておいてほしい」と言っていた意味は、あとから少しずつ分かってきた気がします。

「期待値調整」という言葉も、中野さんが大切にしている軸です。スタートアップにありがちな「調達額の先行アピール」とは、あえて距離を置いてきました。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

「◯億円調達しました」というニュースだけが先行して、その後に名前を聞かなくなる、というのが昔から少し苦手で。だから僕は、会社としての期待値調整をすごく意識しています。大きく見られすぎるのも、小さく見られるのも嫌なんです。20代前半で、まだ何も成し遂げていないのに大きく見られると、思い込みが生まれてしまう。それが、自分でも怖いんですよね。

では、どう動くのか。中野さんの行動原理は、徹底してシンプルでした。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

起業したい人に伝えられることがあるとすれば、「1秒後から動いたほうがいい」ということだけです。1秒後に動いて、2秒後にやめてもいい。動かないとフィードバックは得られないので、とにかくすぐ調べて、すぐ試す。いまはAIがあるので、聞けば大体のことは分かりますから。

その先に、印象的な“勝率論”が続きます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

ビジネスモデルも、とりあえずやってみればいい。99%は失敗しますけど、100回やれば7割くらいは当たりを引ける。これはギャンブルよりずっと割がいいと思っていて。ギャンブルは一回回すのにお金がかかりますが、調べて動くのにかかるのは自分の時間と労力だけ。お金もコネもなくても始められる。みんなに平等なんです。

一緒に組みたいパートナー|地方のカードショップ、オリパ事業者へ

woorthのトレカ事業は、いま積極的にパートナーを探しています。中野さんがまず挙げたのは、地方のカードショップでした。そこには、独自の市場観があります。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

人口あたりのカードショップの数は、実は地方のほうが少ないんです。だから、良いカードは地方に集まりやすい。それを都内やオンラインで売る。地方は仕入れ力、都市は販売力、という形でうまくつながれると思っていて、いまも10店舗ほどと継続的に取引しています。

もう一方のパートナー像が、オンラインオリパなどの販売事業者です。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

自分たちより強い販売力を持っている事業者さんとは、ぜひ組みたいです。規模の大小は問いません。在庫を常に抱えているので、取引先が多いほど回転できて、お互いにとってプラスになる。地方に眠っているカードを集めて、必要としている人に届ける。その循環をつくっていきたいんです。

集めたカードは、国内だけにとどまりません。海外にも需要があり、いまも新しい取引先が増え続けているといいます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

良いものを集めて、必要としている人に、できるだけ速く届ける。それが在庫を健全に回すコツなんです。最近も、地方の小さなカードショップさんと新しくご縁ができました。店舗でただ並べておくより、本当に欲しい人のところへ動かしたい。だから、強いチャネルを持っている方とは、国内外を問わずどんどん組んでいきたいですね。

地方で仕入れ、都市で売り、オンラインや海外へと流していく。話を聞いていると、中野さんが「カードを通じた経済の循環」を設計していることが見えてきます。

オフの中野泰輔|月1回の海外旅行と、素顔でいられる場所

仕事の話が大半を占めた取材でしたが、オフの過ごし方にも人柄がにじみました。中野さんは海外旅行が好きで、平均すると月に1回ほど出かけるといいます。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

一番よく行くのは韓国です。なぜか、一番自然体でいられる場所なんですよね。言葉もなんとなく分かるし、生活もしやすい。日本にいないほうが、自分は生き生きしているなと感じることもあります(笑)。

その背景には、少しずつ「知られる存在」になってきたことへの戸惑いもあるようです。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

最近は秋葉原を歩いていると、声をかけていただくことも増えました。本当にありがたいんですけど、一方で何も気にせず過ごせる時間も大事にしたいなと。だから旅行は、その意味でもちょうどいいのかもしれません。

数字を追いかけ、情報を浴び、すぐに動く。その一方で、誰にも知られない場所でふっと力を抜く。そのバランス感覚もまた、中野さんらしさなのかもしれません。

起業を志す人へ|「1秒後に動く」が、いちばんの近道

最後に、これから起業を志す人へのメッセージを聞きました。返ってきたのは、やはりあのシンプルな原則でした。

中野 泰輔
株式会社woorth 代表取締役中野 泰輔

偉そうなことは言えないですけど、決めているのは「1秒後から動く」ということだけです。動けば必ずフィードバックが返ってくる。それを誰よりも早く回す。失敗を恐れるより、失敗しない方法を探しながら、まず手を動かしてみる。お金もコネもいらない。それがいちばんの近道だと思っています。

その言葉の裏には、机の上で悩むより、まず試して現実からの反応を受け取るほうが速い、という確信があります。AIの登場で「調べる」コストが限りなく下がったいま、動き出しのハードルは、かつてないほど低くなっている。だからこそ、最初の一歩を踏み出すかどうかだけが差になる。中野さんは、そう言い切ります。

Web3とトレカ。一見遠い二つの世界を、中野さんは「数字を増やすのが好き」「面白いものに素直に張る」「失敗を避けながら、すぐ動く」という一本の線でつないでいました。秋葉原の行列店は、その哲学が形になった、ひとつの到達点なのかもしれません。

株式会社woorthについて

中野さんが代表を務める株式会社woorthは、「社会に新しい選択肢を」を掲げ、NFT真贋鑑定ツール「eagis」、法人向けWeb3リサーチ「Ozon Labs」などWeb3領域の事業を展開しています。トレカ事業部では、秋葉原の「ローリエ本舗」をはじめ複数店舗を運営。地方のカードショップやオンラインオリパ事業者とのパートナーシップ、採用のお問い合わせも受け付けています。

株式会社woorthの公式サイトを見る

※ 本記事は2026年5月時点の取材内容をもとに作成しています。

お問い合わせ

記事内容へのご質問、取材・掲載・サービス紹介のご相談など、お気軽にお問い合わせください。編集部が確認のうえ折り返します。

お問い合わせフォーム