トレカ専門店と聞いて、どんな売り場を思い浮かべるでしょうか。ガラスケースに並んだ数万円のカード、通路に積まれた段ボール、声をかけづらい空気。ブックオフグループが2021年に立ち上げた「Japan TCG Center」が最初に変えようとしたのは、まさにその光景でした。

売り場の主役は、光り物でも高額シングルでもありません。大会に出るプレイヤーが、デッキを組むために買っていく数百円のカードです。そして、なぜポケカ以外のタイトルにも力を入れるのか。なぜ「入店のしやすさ」にこだわるのか。1号店である吉祥寺駅北口店の店長・吉田豊さんに話を聞きました。
Japan TCG Center の主戦場はシングル売買|大会の熱気が、そのまま売り場になる
平日の夕方でも、店内にはプレイヤーの姿があります。大会スケジュールが掲示され、デュエルスペースが埋まっていく。物販とプレイスペースが地続きになっているのが、この店の基本構造です。
うちはプレイヤーさんがメインです。もちろんパックも売っていますし、封入商品も扱いますが、感覚としては遊ぶ用のカードを売り買いしているお店です。大会があって、賑わいがあって、その流れでシングルが動く。そこが本体ですね。

サプライは網羅する|他店に行かせないための品ぞろえ

だからこそ、周辺のサプライも手厚くなります。スリーブ、デッキケースといった消耗品は、プレイヤーが最も高い頻度で買い替えるものだからです。
サプライは網羅するようにしています。プレイヤーさんが「これがない」と思って他店に行ってしまうのが一番もったいないので。遊ぶために必要なものが全部そろっている、という状態を優先しています。
地域のトレカショップの中心になるために

商売として見れば、いまはポケモンカードの勢いが突出しています。それでもポケカ以外のタイトルに力を入れているのは、この街のトレカショップの中心になりたいという考えからでした。
商売的に言えば、確かに今はポケカがすごい。ただ、ポケカの一本足打法をやるつもりはないんです。逆に言うと、そこまで規模の大きくないタイトルもちゃんと扱う。小さいタイトルを切り捨てないというのは、意識してやっています。
地域のトレカショップの中心になれるように、いろんなユーザーの方に訪れてほしいと思っています。だからポケカ以外にも力を入れて、いろいろなニーズに応えられるようにしておきたいんです。
Japan TCG Center はポケカ以外のタイトルにも力を入れている。
- 地域のトレーディングカードショップの中心になることを目指しているため
- 扱うタイトルが広いほど、さまざまなユーザーが足を運ぶきっかけになるため
- 来店する人の目的は一つではなく、その一つひとつのニーズに応えたいため
ほぼ毎日、どれかのタイトルの大会が立つ|予定表が示す品ぞろえ

その姿勢は、店頭に貼り出された大会予定表にそのまま出ています。8月の吉祥寺駅北口店だけで、ポケモンカード、遊戯王OCG、デュエル・マスターズ、ワンピース、ガンダムカード、ヴァイスシュヴァルツ、ユニオンアリーナ、バトルスピリッツ、ヴァンガード、クロススターズ。ほぼ毎日、どれかのタイトルの大会が立っています。
予定表は1か月分で5枚。公認・非公認の別、開始時間、定員、参加費まで1件ずつ書かれています。





オリパも否定はしない|入口脇に置かれた自動販売機
そしてオリパについても、否定はしません。実際、入口脇にはオリパの自動販売機が置かれています。
オリパを一切やらない、という言い方をするつもりはないんです。ただ、根っこは「プレイヤーがいれば、やっていけるチェーン」を目指している。そこは変わりません。

主役は数百円のカード|高額品を売り場の中心に置かない
同業では、万単位の高額カードや光り物を目立たせる売り場設計が主流です。Japan TCG Center はそこを主軸に置きません。
万を超えるものや、いわゆる光り物を売り場の中心に据えることは、あまりしないですね。実際に多いのは数百円の価格帯です。そのくらいの値段なら、高校生くらいの子でも普通に買っていける。そのほうが、うちのポジションとしては合っているんです。
高単価を追わない代わりに、来店頻度と回転で成り立たせる。売り場の見え方から採用まで、この一貫性が全体を貫いています。
専門店の敷居を無くす|誰もが入りやすい店舗に

もともとの問題意識は、既存のトレカ専門店に対する違和感でした。
専門店って、接客もあまりなくて、通路に段ボールが置いてあったりして、ちょっと敷居が高いんですよね。カードを始めたばかりの人が入ると、「こんなことも知らないのかと馬鹿にされるんじゃないか」って思ってしまう。そういう空気、ありませんか。
だから、そうじゃない店を作ろうと。ヘビーユーザーも入れるし、ライトユーザーも入れる。子どもも入りやすくて、フレンドリーで。いろんな人が入れる店にしよう、というところから始まっています。
- 物理的な壁:通路をふさぐ在庫、暗い照明、どこに何があるか分からない棚
- 心理的な壁:初心者が質問しづらい空気、常連前提の会話
- 接客の壁:レジ対応のみで、相談する相手がいない

ブックオフでは取りこぼしていた客層|「入りやすさ」から「専門性」へ
ブックオフという母体があったことは、コンセプトの前提そのものでした。
ブックオフは、やっぱり入りやすさ、始めやすさがあるんです。そこから始められる。ただ、そこから先に進んで上達していくと、今度は専門的なものが必要になる。ブックオフだけだと、そこは結構取りこぼしてしまうんですよね。
取れていない客層も取りたい。かといって、入りづらい薄暗い店にはしたくない。だから最初から明るい感じにして、子どもも入りやすい売り場にしよう、というストーリーでした。
このカルチャーへの入りやすさと、受け入れる姿勢。それが結果的に強みになっていると言います。
明るく、どこに何があるか分かる|売り場と接客の設計
実際の売り場づくりで気をつけているのは、極めて具体的なことでした。
とにかく明るく。あとは入り口を広く取ること。それから、どこに何があるのかを全部書く。これは正直、ほぼ手作業です。でも、初めて来た人が迷わないというのは、そこでしか作れないので。

接客も、来店客の目的によって求めるものが違うことを前提に組み立てています。
お客さまが何を求めているかは本当にさまざまです。コレクターの方なら状態のきれいなものを求められる。プレイヤーの方なら、極端に言えば安ければいい。本来お店に並ばないようなものが、実はプレミアがついていて価格が違う、ということもある。そこをできる限り拾って、対応していく。
接客の基準は「丁寧さ」ではなく「相手の目的を当てにいくこと」。
- コレクターとプレイヤーでは、同じカードでも評価軸(状態か価格か)が正反対になる
- 相場が動く商材では、店側が拾わない限り価値のズレがそのまま放置される
- 目的を先に特定できれば、提案の精度が上がり在庫の回転も速くなる
買取と販売が、ひとつの導線で完結する

「これが欲しいんだけど」と客が言えば、その場で在庫を検索し、買取も販売も同じカウンターで完結する。番号管理によって、すぐ取り出せる状態を維持しています。
その中心にあるのが、店内に据えられた「P-SEARCH(トレカ検索機)」です。タブレットでタイトルを選び、カードを検索する。同じ端末で「売る」を選べば買取金額が確認でき、「買う」を選べば売り場にないシングルもカートに入れられます。

そこで調べたものを、こちらですぐ出せるようにしています。番号で管理しているので、探す時間がかからない。買取も販売も、同じ流れの中で見られるようにしています。
ポイントカードもここに紐づいています。トレカ専用のカードで、入会金・年会費は無料。買うときは中古トレカ・新品トレカとも税抜金額の1%、売るときは買取金額の3%が貯まり、1ポイント=1円としてトレカ関連商品の支払いに使えます。買うだけでなく、売っても貯まるという設計です。

そして、この導線がそのまま店の循環を作ります。
新しいものを買って、実際に開けて、自分のデッキに使う。そのついでに、いらないものを買い取りに出してもらう。それをまた当店がシングルとして販売する。この流れができているのが理想ですね。
未経験の学生が主戦力|採用と育成
アルバイト採用は学生が中心。カード未経験でも受け入れています。
アルバイトは学生が多いですね。「やったことはないけれど、やってみたい」という方でも大丈夫です。実際、働き始めてからカードを始めた人もいます。特にプレイヤーとして楽しむようになった、というスタッフもいますよ。
売り場の空気を作るのが「初心者に厳しくない人」であることを考えると、この採用方針自体がコンセプトの一部になっています。
店舗ごとに色が違う|変わらないのは「プレイヤーファースト」

2021年11月にオープンした吉祥寺駅北口店を1号店に、千葉駅前店、本厚木駅前店、錦糸町マルイ店と展開してきました。直営店に加えてフランチャイズ店もあります。チェーンとはいえ、店舗ごとに個性があります。
お店によって色はちょっと違いますし、攻めている銘柄も違います。ただ、プレイヤーさんファーストで、シングルの売買が中心になるというところだけは変わりません。プレイヤーの方に見に来てもらうための店づくり。そこは常に意識しています。
いまでは店舗ごとにコミュニティが生まれ、常連同士の関係が売り場の空気そのものになっているといいます。
取材を終えて
高額シングルを主役にする売り場、SNS映えする封入商品、話題性の高いオリパ。トレカ小売の勝ち筋として語られるものの多くは、瞬間的な売上に効く打ち手です。
Japan TCG Center が選んだのは、その逆でした。数百円のカードを主役に置き、ポケカ以外のタイトルにも力を入れ、初めて来た人が迷わない売り場を手書きで作り続ける。買って、遊んで、いらないものを売り、それがまた次のプレイヤーに渡る。この循環が回っている限り、店は成立するという設計です。

ブックオフという「入りやすさ」から、専門店の「深さ」へ。その階段を、途中で誰も置いていかないように作ってある。それがこの店の設計でした。
数百円のカードを買った子どもが、来月には大会の卓に座っている。売った1枚が、次のプレイヤーのデッキに入る。その循環が回り続ける限り、店は成り立つ。地下へ降りる階段は、そのための入口なのだと思います。
最後に、店舗情報をまとめておきます。

- 住所:〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-13-2 白樺ビルB1階
- 電話:0422-23-8260
- アクセス:JR中央・総武線/京王井の頭線「吉祥寺駅」北口より徒歩。サンロード最初の信号を右折、ABCマート前
- 営業時間:月〜木 10:30〜21:00 / 金・土・日・祝 10:00〜21:00(BOOKOFF公式の店舗ページより)
- 営業時間(2026年9月1日から):平日 11:00〜21:00 / 土日祝 10:00〜21:00
- 公式X:@JTC_kichijoji
- 店舗ページ:Japan TCG Center 吉祥寺駅北口店|BOOKOFF
取材日:2026年8月13日