免税が変わるとポケカ相場は崩壊する?「海外勢が買わなくなる説」を調べてみた

「免税が変わるから、海外勢がポケカを買わなくなる」

「スニダンで買ってショップに売る循環も終わった。これ、相場崩壊では?」

こんな話を聞くと、持っているカードの値段が気になりますよね。

でも、この話。免税の変更、ショップの買取、オリパ、海外需要がひとまとめになっています。いったん分けてみると、見え方がかなり変わります。

先に見立てを書いておくと、免税の不正利用にはブレーキがかかる。ただ、それだけでポケカ相場全体が崩壊するとは、今ある資料からは言えません。

では、何が変わって、何がまだ分かっていないのか。順番に見ていきましょう。

※制度・企業発表の確認は2026年9月17日時点。今後の相場を断定するものではありません。

11月から「店頭で安く買える」が変わる

免税制度の変更は、本当です。

2026年11月1日からは、免税対象の買い物も店頭では税込価格で支払い、国外への持ち出しが確認された後に消費税相当額が返る「リファンド方式」になります。購入から90日以内の出国時に税関の確認を受け、返金するのはお店か委託先です。国税庁の制度案内

たとえば、税込11万円の商品なら、税抜価格は10万円。これまでは免税の要件を満たす人が店頭で10万円を払う形でしたが、新制度ではまず11万円を払います。

ここで効いてくるのが、国内で売ってしまうケース。

免税で買った品を日本の買取店に持ち込み、差額を取る。そもそも国外に持ち出すことを前提にした制度なので、こうした国内横流しは制度の趣旨に反します。

新制度では、持ち出し確認前に税金分を払っているため、「免税で安く買って、そのまま国内で売る」という税差益を取りにくくする仕組みになります。

一方、ちゃんと海外へ持ち帰る旅行者には、確認後に税相当額が返ります。免税そのものがなくなるわけではありません。

ただ、先に全額を払う負担や返金の手間は増える。買い物への影響がゼロ、とも言い切れないでしょう。

「スニダンで買ってショップに売る」は、別の話

ここ、話が混ざりやすいところです。

免税の国内横流しは、免税対応している実店舗で買うのが起点です。

一方、今回話題になっているのは、こんな循環。

スニダンで購入 → ショップに買取 → オリパの当たり枠へ → 当たった人がスニダンに出品。

アプリ上の個人間売買を起点にしたこのルートに、旅行者向けの店頭免税をそのまま当てはめることはできません。スニダンの実店舗での免税販売は、また別です。

では、なぜショップが個人間の相場より高く買えることがあるのか。

税制面の背景として、古物商等特例があります。一定の要件を満たせば、ショップは適格請求書発行事業者ではない個人などから古物を仕入れた場合も、必要事項を記載した帳簿の保存で仕入税額控除を受けられます。国税庁の解説

ただし、これで自動的に「相場より1割高く買っても儲かる」ことにはなりません。 売るときの税金、手数料、販売価格、在庫リスクも関係します。

さらに、オリパの当たり枠として使えば、高い買取価格を支えられたのではないか。これは仕組みとして考えられる仮説です。

でも、その循環がどのくらいの規模で回っていたのか、今どれだけ縮んだのか。今回の資料には、それを確かめられる取引データがありません。

「そういう動きがあった」という現場の観測と、「それが相場全体を支えていた」という結論の間には、まだ距離があります。

10万円のカードで考えると、怖いところが見えてくる

ここからは実際の相場ではなく、計算用の仮例です。

あるカードの店頭価格が税込11万円、税抜10万円。別のショップの買取価格が10万5,000円だったとします。

免税価格だけで比べれば、差額は5,000円。通常の税込購入なら、売った時点で5,000円の赤字です。免税の差が、売買の窓を開ける計算になります。

ただし、買取価格が9万円に下がったらどうでしょう。

免税で10万円で買えても赤字です。相場が下がり、ショップが買取を絞れば、免税があっても回らなくなります。

だから、「循環が消えたから下がった」だけでなく、「下がったから循環が回らなくなった」可能性も考える必要があります。

しかも買取側には、すでに別の制限があります。2024年4月1日以降、免税購入品と知りながら仕入れた場合は、古物商等特例の有無にかかわらず仕入税額控除を受けられません。国税庁のお知らせ

11月になって突然すべてが変わる、という説明では、この時間差も抜けてしまいます。

海外勢、みんな買わなくなったの?

これも、ひとくくりにはできません。

スニダン運営のSODAは、2026年9月1日の発表で、韓国発送のポケモンカード関連商品の取引件数が、1月から6月で約11倍になったとしています。対象はBOX、パック、カードです。SODAの発表

海外との取引が伸びているルートもある。少なくとも、「海外の買いが全部消えた」という説明とは合いません。

ただし、これはスニダンの韓国向け取引の上半期データです。海外全体の購入額でも、9月の高額PSAカードの需要でもありません。

取引件数が増えることと、自分の持っているカードが高く売れることも、別の話です。

また、SODAの実店舗は新制度への対応を進めています。Oceanは6月8日、SODAの国内店舗への返金サービス導入決定を発表しました。「免税変更でもう海外客には売れない」という一方向の動きではなさそうです。Oceanの発表

ショップの破産は事実。でも、原因を足してはいけない

相場の下落が店の経営に響く怖さは、実例があります。

帝国データバンクによると、秋葉原で買取・販売を行っていたThe TCGは、2026年4月16日に事業停止。5月1日に破産手続き開始決定を受け、負債は約4億円でした。

同社の説明では、相場の影響で仕入れた金額を下回る販売が生じ、買取代金を用意するための早期・低価格販売で資金繰りが悪化したとされています。帝国データバンクの倒産速報

高く買った在庫が、思った値段で売れない。次の買取資金も必要になる。ショップにとって、これは厳しい状況です。

ただ、この資料には「免税絡みの追徴課税で破産した」とは書かれていません。

今回の調査メモでも、トレカショップが免税絡みの多額の追徴で破綻したという報道は確認できていません。未確認の話をくっつけると、実在する破産の原因まで変えてしまいます。

じゃあ、相場崩壊するのか

免税改正だけを根拠に崩壊を予想するのは、話が飛びすぎだと思います。

国内横流しによる買い支えが大きかった商品なら、影響が出る可能性はあります。でも、トレカの免税売上のうち、横流しがどれだけを占めていたかは分かっていません。

制度変更を見越した売買が、すでに価格に影響している可能性も否定はできません。ただ、それが今の下落の主因だと示すデータもありません。

本当に確認したいのは、カードごとの動きです。

  • 表示価格だけでなく、その値段で売買が成立しているか。
  • ショップの買取価格と買取上限枚数がどう変わったか。
  • 出品が増える一方で、買い手が減っていないか。
  • 同じカード、同じ状態で比較しているか。

高額PSA、素体、未開封BOXをまとめて「ポケカ相場」と呼ぶと、強い商品と弱い商品が見えなくなります。

「免税が変わる。だから全部終わり」と言われたら、まずは誰が、どこで、何を買う話なのかを確認したい。

ポケカを欲しくて買う人と、価格差を取りに来る人では、制度変更の効き方も違います。

相場はそこが混ざって動くので、怖い話ほど、一段ずつほどいて見た方がいいと思います。